少しだけ自己紹介をしておくと、僕は東京で働く会社員だ。
IT関係の仕事をしていて、平日はだいたいパソコンの前にいる。
趣味はドライブやキャンプ、コーヒー、DIYなど。
興味を持つと、実力より先に道具が充実する。
一緒に暮らしているのは、ミニチュアシュナウザーの「かげとら」だ。
犬を飼い始めただけのはずが、なぜか今は八ヶ岳で別荘を探している。
別荘探しを始めた頃、見ていたのは数百万円の中古物件だった。
それが1,000万円を超え、ログハウスまで見るようになった。
そして今度は、さらに価格帯の高い物件まで気になり始めた。
数百万円の別荘を探していたはずなのに、ずいぶん遠くまで来た。
予算というものは、物件を見れば見るほど柔軟になるらしい。
あまり身につけたくなかった柔軟性である。
ただ、ここまでいろいろな家を見てくると、少し期待もしていた。
予算を上げれば、それだけ理想の家に近づくんじゃないか。
そんなことを考えながら、また八ヶ岳へ向かった。

土地は広い。でも、何かが違った
この日、最初に見たのは広い土地に建つ中古物件だった。
庭でかげとらを遊ばせることもできそうだったし、家も十分使えそうだった。
条件だけを見れば、悪くない。
ただ、実際に立ってみると、僕が八ヶ岳に求めていたものとは少し違った。
建物の雰囲気は、別荘というより普通の住宅に近い。
別荘を探し始めた頃なら、もっと気になっていたかもしれない。
でも、森の中の家やログハウスを見てきたことで、自分の好みもずいぶんはっきりしてきていた。
せっかく八ヶ岳に家を持つなら、ここに来たときに少し気分が変わる家がいい。
土地が広ければいいわけでも、家が使いやすければいいわけでもなかった。
この物件は、内見を終えて候補から外した。

今度は、平屋を見てみる
次に向かったのは、これまでより価格帯の高い平屋だった。
この頃になると、別荘の使い方についても少しずつ考えることが増えていた。
自分たちだけで使うのではなく、両親にも遊びに来てもらいたい。
将来のことまで考えれば、階段のない平屋は使いやすそうだ。
別荘を探し始めた頃は、犬が走れる庭しか考えていなかった。
いつの間にか、両親の老後まで考えている。
別荘探しは、考えることが多い。
東京からそれほど遠くない場所に、家族が集まれるもう一つの場所がある。
そんな使い方もいいなと思うようになっていた。
しかも、これまでより予算を上げて見る物件だ。
今度こそ、かなりいいんじゃないか。
そう思っていた。

高ければいい、というわけでもなかった
実際に家の中へ入ってみる。
しばらく使われていなかったこともあって、入った瞬間の空気が少し気になった。
室内には虫の姿もあった。
もちろん、掃除をして、人が使い始めれば変わる部分もあると思う。
それでも家の中を見て回りながら、どうしても頭に浮かんでしまう家があった。
以前見た、初めて「ここ、いいな」と思えた家だ。
森に囲まれた庭があって、窓からの景色がよくて、ペチカがあった。
弱点はいくつもあったけれど、それでも候補から外せなかった。
今回の家は、それよりずっと高い。
だからこそ、期待も大きかった。
でも、価格の差ほど気持ちは動かなかった。
ここでようやく分かった。
予算を上げれば、必ず欲しい家に近づくわけではない。
考えてみれば当たり前なのだけれど、実際に見比べてみるまで分からなかった。

この日、もう一軒だけ見る予定があった
2軒を見終えても、最初に気に入った家を超える物件は見つからなかった。
やっぱり、あの家なのかもしれない。
そんな気持ちも少し出てきていた。
ただ、この日はもう一軒、内見を予定していた。
ログハウスだった。
そして価格は、これまで見てきた中で一番高い。
最初に物件情報を見たときは、「さすがに高いな」と思った。
数百万円の別荘を探していた人間の感覚が、まだ少しだけ残っていたらしい。
それでも、写真を見ているうちに気になってしまった。
見るだけならタダである。
そんな気持ちで、この日最後の物件へ向かった。

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