私は、現在、コンサルティングファームでマネージャーとしてプロジェクトをリードする立場にあります。
でも、ITエンジニアからコンサルタントに転身したばかりの5年前は、スキルのギャップにとても苦労した時期がありました。
そのような時期に読んだ本書外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」は、コンサルタントが日々どのように思考し活動すべきか、コンサルタントとしてのいろはを教えてくれる座右の書となりました。
本書を読むべき対象者
本書は、著者の山口周さんが広告代理店、外資系コンサルティングファーム勤務で磨きあげた知的生産術を体系的にまとめたものです。
なので、コンサルティングファームに入社したばかりの若手コンサルタントや事業会社から転職したばかりの迷える新米コンサルタントにとってとても有益な内容となっています。
もちろん、コンサルタントに限らず、「知的生産を高め、自分が所属する組織や社会によりよい変化をもたらそうとしている30代のビジネスパーソン」にとっても有用な一冊です。
どんなにピカピカの学歴を持った頭脳優秀な人材でも、「働き方」を知らないとまったく知的成果を生み出すことができない、ということです。こういった人たちに対して何より必要なのは、「思考技術のトレーニング」ではなく、具体的に手や足をどう動かすか?という「行動技術」、つまりは「心得」のトレーニングなんですね。
本書のポイント紹介
99の知的生産術が体系的にまとめられており、どれもとても学びが多いのです。
今回は、3点ほど紹介します。
指示は「行動」ではなく「問い」で出す
自分が情報収集に走る、あるいは部下を走らせる前にまずすべきなのは、「問い」を明確化するということである。
具体的には、「日本のゲーム市場に関連して、なるべく沢山資料を集めておいて」というのは、ダメな指示の典型である。
以下のような問いにある程度答えが見えるような資料を集めておいてという指示を出すべきである。
日本のゲーム市場について、
- どの程度の市場規模があるのか?
- 市場規模は拡大傾向にあるのか?または縮小しているのか?
- どのような市場セグメントに分けられるのか?など
- セグメントごとの拡大/縮小トレンドはどうなっているのか?
- 各セグメントの収益モデルは同じなのか?違うのか?
- 違うとすればどのように違うのか?
- 各セグメントの主要プレイヤーは誰か?
- 彼らの強みはそれぞれ何か?一方で不安要素は何か?
視点・視野・視座を変える
- 視点とは、対象に着目するポイント
- 視野とは、検討する対象の空間的・時間的な広がりのこと
- 視座とは、対象を考察する上での自分の立ち位置のこと
視点
モノゴトに作用を与えれば必ず反作用がある。「競合企業」を例とした場合、顧客を奪い合うという負の視点がある一方、市場を一緒に開拓してくれるというパートナーという正の視点もある
重要なのは、多面的な「視点」を設定して、それらを柔軟に行き来できる包容力のある知的態度を身につけられるかどうかである
視野
日本人はよく「イノベーションに向いていない」、「なぜアップルのような会社が日本からでてこないのか?」といわれる。ここ二十年くらいは世界を席巻するようなイノベーションがなかったためそのようにいわれるが、はたして民族的にそうなのか?
時間を広げてみると、平安時代の昔から日本は世界に先駆けてさまざまなイノベーションを起こしていることがわかる
空間を広げてみると、イギリスからもフランスからもドイツからも出てきていない。「なぜ米国だけがアップルのような会社を生み出すことができるのか?」が論点として適切かもしれない
考察の対象を狭めてしまうと誤った意味合いを抽出してしまう可能性がある。空間軸・時間軸をなるべく広げて、自分の視野が狭くならないように注意が必要である
視座
視座を上げるというのは「誰の利益を背負っているか」という立場を変えるということである
個人の利益を背負う立場、チーム、部門、会社、国、世界全体。ある視座においては適切と考えられた答えが、より高い視座から考えた場合には不適切だったということはよくあることである
2つ上の視座を持て(担当なら課長ではなく部長)とよくいわれるが、筆者は、若い人にもっと高い視座を持ってもよいと言う
具体的には、社長の視座さえ突き抜けた「革命家の視座」であり、この世界を、いまある世界からどのようによくしていくか?その計画を実現するために、自分の会社をどう活用できるか?このように高い視座に立って仕事をすれば、毎日の仕事の景色も全く違ったものに見えてくる
質問には答えずに質問で返す
顧客が質問をするとき、それが本当の意味で質問であることは滅多にない
相手が質問をしているとき、それは質問という名を借りた反対意見や懸念の表明であるケースがほとんどである
もし質問が出されているのなら、それは知的生産物に欠陥があったということである
質問が出た際は、その質問の背後にある真意、つまりその質問は「どのような欠陥を指摘しているのか」をくみとる質問を、逆にこちらからするべきである
例)
顧客:この期間でこれだけのサンプル数を処理するって、現実的に可能でしょうか?
自分:情報も十分に集まっており、時間的に問題ないと考えますが、何か懸念材料はありますか?
逆に質問で返すことでより良質なインプットが得られることがある
まとめ
99の知的生産術のほんの一部を紹介しました。
本書を読んで、日々実践することで、知的生産を高め、組織や社会によりよい変化を与えられるとよいですね。
外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」が気になった方は、ぜひ読んでみてください。
すまーとちゃんねるを閲覧いただきありがとうございました。
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